スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 2012.12.29 Saturday
  • -
  • -
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

サンフランシスコでお散歩 その3

やっと到着したバークレーは、乙女の心にぐいぐい食い込んで来る様な可愛らしい街だった。着いた途端に我々を容赦無く襲い、同行者であるディープポテトの傘を粉々に破壊した大嵐も、傍でその様子を冷めた目で見つめていた紅顔の美女である私に気付き、貴女様のご同行者様でしたかこれは失礼千万を、とばかりにあっという間にその魔の手を引っ込め、我々が目的地である素敵なバークレーのショッピングモールに着く頃には、いじらしいばかりの青空になっていた。 

ここで同行者をディープポテトとしたのは、ニヒル牛マガジンの店番日誌ディープ1/24号にて本人が明かしたニックネームであるからである。私はあの日誌を全面的に信頼し、同行者である三名を今後ディープポテト、ニュアンス、ハーフ、と呼ぶことにする。もう一人、あの日誌に出てこない人物が一緒だったのだが、彼女については私の独断と偏見で、ジュエリーと呼ぶことにしよう。煌びやかな印象の残る小柄な女性なので、ジュエリーの似合う、ジュエリーその物の様な、という意味である。
ちなみに私自身は私の事をなんと呼んでいるかというと、薔薇のエルフとか青い衣の聖女とか呼んでいる為、私に直接会った事のない方はどうぞその様にイメージしていただきたい。 こうして今後はディープポテト、ニュアンス、ハーフ、ジュエリー、そしてこの私、青い薔薇の聖女の五人がサンフランシスコの街をうろついている様子が、読んでいる方にも容易に想像できるはずである。

        *      

さて、バークレーはバークレー大学という大学で有名な学生街である、という予備知識があったので、建ち並ぶ瀟洒でおしゃれなお店達は高級そうに見えるけれども学生価格のお求めやすいお値段のお店達に違いないと思ったがそうは問屋が卸さなかった。
おしゃれなお店の品々はどれも見たままそのままのおしゃれな代官山価格なのであり、吉祥寺の大中で買った700円の半纏を着てうろついている様な幻夢の森の美女に手が出るシロモノではまるで無かった。

しかし世俗や物欲といった物にまるで関心の無い心清らかな薔薇の乙女にはそんな事などどうでもよく、ただうっとりと眺めて歩くだけで十分に楽しく、心置きなくバークレーを堪能しバークレーの素敵さを心に刻み付けたのである。

                *


ふいに、日本でジャム屋を営むハーフが、バークレーのジャム屋へ行きたいと言い出した。

ハーフによればその目的の有名なジャム屋はショッピングモールからかなり離れた所にあるということで、私たちはモールでの買い物を早々に切り上げ、タクシーをつかまえてそのジャム屋へと向かうことにした。

つかまえた流しのタクシーの運ちゃんは、ハーフから目的地を聞くや目を丸くして驚き、「どうしてもここへタクシーで行くんですかい、どうしてもですかい。」の様な台詞を何度も繰り返し、どうしてもってんなら五人乗ってきっちり10ドル払ってくれるなら行ってやるとかなんとかぬかしやがったので嫌な予感が心によぎった。薔薇の乙女は何かまた、同行者の醸し出すおかしな出来事に巻き込まれているのではないのだろうか。このままそのジャム屋へ行っても大丈夫なのか。危険なのではないのだろうか。

しかしごねた割には運ちゃんの提示してきた乗車運賃のお安さに腑に落ちない疑問を抱えつつタクシーに乗り込むと、タクシーは5mくらい走ったあたりのビルの前でなんのためらいもなく止まった。そこが件のジャム屋だったのである。振り返るとさっきまでいた素敵なショッピングモールがすぐ目の前に見えるではないか。全力疾走で戻れば多分30秒もかかるまい。ハーフにもしっかりして欲しい物である。


とはいえそのジャム屋はなんていうのか。店舗というよりはキッチンであって。そこでジャムも売っているのだけれど、中々いい物を見せてもらったという感じだった。

白い壁の静かで広いキッチンでは、女性がひとりで丁寧にジャムを作っている。キッチンの周りにはまるで図書館の様に大きな棚がいくつもあって、そこにシンプルな瓶に詰められた美味しそうなジャム達がひしめき合っていた。ジャムってロマンかもしれない、と思わせる素敵な光景である。
  
              

     "ここはジャムの図書館よ、ひと瓶ひと瓶に、物語があるの。"

なんて言いたくなりそうになりあわてて正気を取り戻した。

                                                        
                  *


ところで、ここに来て薔薇の精霊である私の心には、重くのしかかるある疑惑が、終止暗雲の様に立ちこめていた事を告白せねばなるまい。

それは他でもない、同行者らのファッションである。
皆それぞれに、中々しっかりとしたおしゃれをしているではないか。
対してこの私は、先ほども控えめに触れた様に大中で買った白い半纏みたいなデザインの偽のダウンコートを羽織っており、その下はもっと悲惨だった。

言い訳がましいのだがこのメンバーの中で唯一私だけが、さっき成田からサンフランシスコへ着いたばかりなのであり、着替える間もなくバークレーへ出かけてきてしまったのであるから、その服装はなんのためらいも無く、国際線飛行用なのである。
長時間のフライトに私が求める物は、なにはともあれ快適さであり、快適である為には、限りなく楽な服装でなければならず、しかも機内食をまちがってこぼしちゃっても全然オッケーでいられる様な、究極のどうでもいい服装なのであった。

もちろん、そのまま街へ出る事も計算には入れていたので、パジャマとまではいかないが、更に告白すれば私は基本的にアメリカ西海岸、という物へのある種のなめた考えを持っていた為、限りなくパジャマに近い、もっと言えばホームレスの方向へも行ける様な、そんなキッチュなファッションに身を包んでいたのである。
とはいえそんな事でへこたれる様な姫ではなく、ボロは来ていても心は錦なのであり、まったく何の問題も無いかの様にバークレー観光を楽しんでいたのだが、ある時同行者らのおしゃれの理由がはっきりとわかって、さすがに愕然とした。

そう。

バークレーへは、なにしに来たの。

ディナーを食べにきたんじゃないの。

しかも相手は、1ヶ月も前に予約しておかねばならない様な老舗の有名店、シェパニーズ、である。

シェパニーズの為に、おしゃれしていた四人。
ドレスコードがあった場合、間違いなく私だけが入れないであろうというその深刻な事態に、さすがに私の心もざわめきたった。しかも私を連れている事で、この四人は恥ずかしいかもしれないではないか。

しかしバークレーはホテルのあるダウンタウンとはまるで違う区街にあったので、着替えにホテルへ戻るわけにも行かず、一か八か私はカウチポテト上がりみたいな服装でその有名店に挑むしかないのであった。いきなり身分がディープポテト並みになった様で不本意ではあるが、いたしかたなく私は、その薄汚い格好で、シェパニーズの扉を開けたのである。
 

   


                                     (続く)


CM 

このエッセイを面白い!と思ったら、この漫画も
買ってみよう!!

大竹サラの爆笑旅ものエッセイコミック

"地球道草アンダンテ" 税込み1000円ぽっきり!

http://www.amazon.com.jp/exec/obidos/
ASIN/4091300790/mixi02-22





























スポンサーサイト

  • 2012.12.29 Saturday
  • -
  • 16:04
  • -
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
いや〜やっぱ面白いっす!!

ジャムの図書館!!
私もその物語、むさぶり尽くしたいです。心行くまで!!

しかし5mで10ドルって、ひどいな。
ちょっと教えてあげればすむことなのに、10ドル…もうちょっと細かく調べてればねぇ。。

でも何よりも気になるのは、シェパニーズのディナー!
震えます!楽しみです!
  • エミリア
  • 2011/01/29 1:17 AM
いらっしゃいませー。

実はタクシーの運転手さん、詳しくどこだというのはわからなかったんですよ。ハーフが本に載ってる地図を見せて、えー、これってもしやすげえ近いんじゃ〜?みたいな感じだった様子。しかもポテトが押しが強くて、なにがなんでも乗るって感じだったっすから、ドライバーは無実なんです・笑。
  • 大竹サラ
  • 2011/01/29 4:06 AM
はじめておじゃましたものです。楽しく拝見しました。地球道草アンダンテ、ぜひ新品で買いたいのですが、調べてみるとアマゾンでは中古品しかありません。本やタウンでも注文不可能・・・・中古で買うしかないでしょうか。

さて、わたしはだいぶ前に大竹先生の四コマ漫画を読んだことがありまして、ふしぎな楽しさが記憶に残っています。アンダンテもコメディなのでしょうか?
  • ウティカ
  • 2011/06/25 12:44 AM
ウティカ様、

せっかくコメントいただいたのに、長く留守にしていてすみませんでした。

アンダンテは旅ものエッセイギャグ漫画です。新品、買っていただきたいけれど、もしかしたらもう無いのかもしれません。。

どちらかで手に入れていただけますよう、祈っております。
コメントありがとうございました。
  • sara
  • 2011/10/09 4:16 AM
コメントする








   

プロフィール


大竹 サラ

漫画家兼業ミュージシャン/14人編成の無国籍風楽団パスカルズのメンバーだったり小学館の少女漫画雑誌で連載を持つ漫画家だったり、他にも色々な顔を持つ人生旅だらけの女。

バックナンバー

カテゴリー

コメント

others


sponsored links